来院されているお母さんからよく受ける質問をご紹介します。

質問1.

「子供の歩き方が変で(足の先が内に向いている)、よく転倒したり、足が痛いとか、しょっちゅう言います。お医者さんに診てもらっても、骨には異常がないので、おそらく成長痛でしょうから、しばらくするとよくなるとの診断で、具体的な治療というのはありませんでした。カイロプラクティック的に診た場合はどのような原因が考えられますか?」(関連する質問・・足先が内側に向いている赤ちゃんについて)

回答.

小さな子供さんで、足先が内側に向いている「うちわ歩き」はしばしば見られます。医療機関で先天性内反足や脛骨の内捻、大腿骨頚部の異常前捻などの問題がないと確認されたのであれば、他の可能性として、バイオメカニカル的な障害が考えられます。(こちらのほうが圧倒的に多いようです)

踵骨が外反した扁平足でもおこりますが、この場合見た目で異常を確認できるのでまだ助かります。問題は外観上特に変化がない次のようなケースです。

踵の外側から着地して、足の先を進行方向にして親指で蹴り出すという一連の流れが、足根骨や第1中足骨が隣接する関節の動きが悪い為に疼痛が出現したり、歩きにくかったりします。これを逃避する為に、足先を内側や外側に向けることで、地面に着いている「時間」と「距離」(足を通る応力線…踵外側から前足部へそして第1足指と第2足指の間を通る)を短縮しようとする働きが生じます。治療は足部の関節の可動性が正常であるかどうか確認し、異常が検出された部位の可動性を回復させることで、障害の原因が取り除けることが多いのです。あとは、正しい歩き方を指導します。治療室前の廊下で、幼稚園に通うぐらいの子供さんが元気で明るく、一生懸命に歩き方を練習する姿を見ると実に微笑ましいものです。

次に関連する質問の、足先が内側に向いている赤ちゃんのケースです。この場合検査として、踵部分を固定して母趾側から小趾側へ向けて軽く押圧を加えます。足の指先が内側から真っ直ぐに上を向き、そこからやや外側に傾けば矯正の必要はありません。自然とよくなりますのでご安心下さい。

質問2.

3才の娘の脚ですが、気がついたらX脚のようになっています。様子を見ていてもよいのでしょうか?

回答.

左図の、「乳幼児における下肢のアライメントの生理的変化」(David J. Magee,Ph.D.“ORTHOPEDIC PHYSICAL ASSESSMENT”)を、見ていただき説明しますと、皆さんほっと安心されます。

赤ちゃんの頃は中程度のO脚ですが、6ヶ月になると軽いO脚に変化してゆきます。そして1歳半ぐらいで下肢は一度まっすぐになります。それが2歳半ぐらいになると、生理的X脚と変化してゆき、4歳から6歳で再びまっすぐになります。

3歳ぐらいであれば軽度のX脚は生理的な変化であり、なにも心配することはありません。しかし最近では、6歳以降の子供さんもX脚が残っていることが多いようです。歩行はうちわ(足先が内側に向く)になりやすく、足の回内代償・下腿の外反の増強を防ぐ為にも正しい歩行指導は必要になります。この場合注意しなければいけないのが、膝と膝をすれないように足先を真っ直ぐに向けることです。左右の足の幅を無理に狭めさせると、膝が擦れ合う為、これを避けて脚の先を内に向けて、足幅を狭くしようとする意識が働きます。

質問3.

6歳になる子供の足が扁平足なので気になります。何に気をつけたらよいでしょうか?

回答.

赤ちゃんは例外なく扁平足で2歳頃までこの状態が続きます。足の裏の柔らかい部分は(内側縦足弓)脂肪パッドと呼びます。ほとんどの子供さんは、この部分が10歳ぐらいまでに内側縦アーチへ変化します。

しかし今の子供さんの環境を考えると、そうのんびり構えてられないようです。厚底ブーツなるものが流行りましたが、今度は厚底シューズという季節を問わず履ける厄介なものが出現し、小学生にもたいへん人気があるようです。家で勉強、家の中でコンピューターゲームをして遊ぶ、外出したかと思えば塾でまた勉強。歩くのは学校や塾への往復だけで、しかも履物は厚底シューズ。これでは足のアーチを形成する為に必要な筋肉が発達するはずもなく、足の裏にセンサーのようにちりばめられた固有受容器を刺激することもありません。

これを裏づけるように、いわゆる扁平足よりひどい状態である足根部の過剰な回内を呈する子供さんの足が目立っています。いつも履いている靴を見せてもらうと、無残に内側の部分が飛び出た状態になっています。「よく連れて来られましたね」と思わず安堵の言葉が私の口からでてしまいます。

このような状態になると、子供さんの足の状態に応じたオーソティックスをつくる必要があり、よく柔軟な扁平足の方に指導される、タオルを足の指で引き寄せる体操では到底間に合いません。腰椎部もバイオメカニカル的連鎖から過剰な前彎が目立ちます。腰が反り過ぎた状態です。「お尻がツンと上向いてカッコイイね」と誉めている場合ではありません。若い女性もハイヒールを履いてこのようなラインを演出し、これがいいものだと誤解してる方が多いようです。座っているとき・立っているとき・歩いているときに腹筋を意識していれば腰は自然に健康的にくびれてくるのに残念なことです。

靴文化後進国である日本の現状は、諸外国(靴文化先進国)の事情と比較することで改めて驚きます。ドイツでは、ほとんどの親が歩き方まで指導し、子供の足には細心の注意を払います。また足を定期的に検診するシステムを国がサポートするほど充実しています。ドイツからの観光客の目には、厚底ブーツ履いて歩いている日本の若者の姿はどのように映っているか、想像は難しくなさそうです。残念ながら日本では企業の利益が最優先され、健康など二の次といった構造的な問題がある以上、健康的な足づくりへの環境改善を望むことも早急には無理のようです。

矯正可否の為の扁平足のテストについて。

立位では土踏まず(縦アーチ)はなくなるが、座って、足をぶらんとさせると縦アーチが現れる場合は矯正可能。ぶらんとさせても縦アーチが見られず平らな場合は、矯正が不可能との記述が専門書でよく見られます。ポリオや脊髄障害による麻痺性扁平足や先天性扁平足(垂直距骨症)など、非常に稀な例外を除いて、そのような検査結果であっても、必ずしも矯正不可能ではないことを私は度々確認しています。

足部の関節遊び運動範囲が少ない(hypomobilityfoot) では、I.A.Kapandjiが指摘する内足アーチに関連のある長腓骨筋、後脛骨筋、長母指屈筋、母指外転筋(先の狭いくつでも働きようがありません)等が自由に動かないため、本来のこれら筋群の作用・機能全てが期待できない状態です。関節の機能障害を検査・マニピュレーションすることは、たとえはおかしいかもしれませんが、「縄で縛られた人質の縄をほどき、解放させてあげる」ようなものです。関節の機能障害からの解放が無事に済めば、アーチに関連する筋肉は自由に動けるようになります。しかし、筋肉も永らく動きを制限された為、すっかり弱ってしまいリハビリテーションが必要です。この場合、私のほうでは左写真(すこし分りづらいかも)のように、縦・横アーチを同時に収縮させる体操を勧めています。はじめの頃はしんどいかもしれませんが、「頭の働きもよくなるよ」と励ましながら、最低10分間は続けるように指導しています。

(つづく)

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