アメリカ上院栄養問題特別委員会は、後に大統領候補にもなったマクガバン議員を委員長に、大物議員を揃えたアメリカ上院でも重要な委員会で、アメリカ国内ばかりでなく、世界中の権威や研究機関の頭脳を動員して食事と健康の関係を調べ、すべて公開の公聴会で報告され、1977年にマクガバン報告をまとめました。それは「合衆国の食事の目標」と題した栄養的な指針とともに、5000頁に及ぶ膨大な記録として公刊されたものです。

この委員会が熱心な審議調査を続けた理由は次のようなものでした。

「ガン、心臓病をはじめ、多くの病気が増え続けている。そして進歩したとされるアメリカの医学を活用し、しかも巨額の医療費が注ぎ込まれているのに、アメリカ国民は病気ばかり増えてますます不健康になるばかりである。この原因を解明し、根本的な対策をたてないことにはアメリカは病気で滅んでしまう。」

これはアメリカばかりでなく、日本も含めて全ての先進国に当てはまるものであることは、有病率の上昇という統計が示す病人の増加、医療費の急増ということだけを考えても、誰にでも納得できることです。

「われわれは何か重要なことを見落としていたのではないか。また現代の医学が進歩していると考えること自体も間違っているのではないか。」という疑問解明のために二年間の審議調査を行い、結論として出されたもののなかで最も重要なものは次の二つでした。

ガン、心臓病、脳卒中などアメリカの6大死因となっている病気は、現代の間違った食生活が原因となって起こる“食源病”である。この間違った食生活を改めることでこれらの病気を予防する以外に先進国民が健康になる方法はない。

現代の医学は薬や手術といったことだけに偏りすぎた、栄養に盲目な片目の医学であった。栄養に盲目でない医学につくりかえる必要がある。

またイギリス政府から派遣されて、ウガンダなど当時のイギリス属領諸国政府の顧問医師を30年勤め、『アフリカ医学辞典』を編集したトロウェル博士は、同委員会において次のような発表をしました。「先進国では、人間なら誰でもかかると思われ、ごく普通になっている病気が1960年までのアフリカ諸国にはほとんどなかった。」

博士はその理由が、アフリカの黒人たちの食生活が先進国の食生活とは内容が違っていたからだと、その違いを詳しく証言し、それが人種的な体質の違いなどによるものではないことを、豊富な実例によって証明しました。また博士は、元気な老人が珍しくなかった在勤当時のアフリカも、今やその様相が「私の半生という短い期間」に一変したと述べました。この現象は我が国でそっくりそのまま起きています。

まったく意味もない数字のマジックに惑わされて、平均寿命が延びたなどと喜んでいる我が国は、寝たきり老人など、要介護老人が世界一多い国です。そして元気な老人が珍しくなかった、かつての長寿村などは、今や過去の伝説に過ぎなくなっています。しかも、それは博士の半生と同じく、ここ20年余りのあいだにそうなったのです。

委員会のメンバーの一人であった上院議員のヒューバート・ハンフリーは、「もしわれわれがそれを知っていたら」という言葉を残してガンで死亡されたそうです。

※本項の内容を更に詳しく知りたい方は、今村光一 編・訳、経済界刊「今の食生活では早死にする」を読まれたらよいと思います。大学の教科書にも使われ読まれています。

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