ここからの内容はやや専門的になりますがご容赦下さい。それでも読んで頂きたいので「足の解剖図」を作成しました。理解する上で助けとなるようでしたら幸いです。治療室では関節模型やイラストを用い、できるだけ分りやすく説明するよう心がけています。

臨床上よく見られる、足根骨や中足骨の可動性の消失(hypomobility foot)や足の甲高(high-arch)母趾の中足趾節関節の可動性の消失(FHL)等のトラブルは、理想的な歩行を妨げる代表的なものです。

正常な関節運動が消失あるいは減少していると、その関節と関連のある筋肉が自由に動くことが制限されます。筋肉は正常に機能しないということになります。

このような問題があると、関節の異常をより悪化させ、その影響は膝関節・股関節だけでなく骨盤・脊柱・頭部へと様々な問題を引き起こすことになります。このような悪い循環のことをバイオメカニカル的なストレスの連鎖あるいはキネテック・チェーンと呼びます。

視診で足部の状態を確認した後、バイオメカニカルなストレスの連鎖を防ぐためのファーストステップとして、まず正常な関節運動があるかを調べます。

その対象となる関節は次のとおりです。中足指節関節と指節間関節、遠位中足間関節、足根中足関節、足根中央関節、その他の足根間関節、モーティス関節、距骨下関節などです。これらの関節に対して個々の関節運動を調べてゆきます。

例えば中足指節関節と指節間関節であれば、@長軸伸長A前方・後方傾斜B内足・外足傾斜C回旋というように個々の動きをチェックしてゆきます。関節遊び運動の正常範囲は非常に小さく、機能解剖の知識やモーションパルペーションの熟練が要求されます。

正常な関節運動とはどのような動きを指すか、わかりづらいでしょうが、次のようにしていただければイメージがつかめると思います。例えば、手の指の関節は、意識して指を動かそうとすると、曲げたり伸ばしたり2つの方向の動きしか出来ません。しかし、指先を片方の手で挟んでやさしく左右にまわしてみて下さい。僅かに指先の関節が回旋するのがお判りいただけるでしょう。また左右・上下にも僅かな動きを確認できるはずです。これを正常な関節運動、略して関節の遊び(joint play)と呼びます。この関節の遊びが正常であると、筋肉は自由に動くことが出来るのです。日常生活で支障なく体を動かせるのは、関節に少し融通がきくようにできているからです。

ぐらぐらした大きすぎる動き(可動性亢進)や、かたい制限された動き(可動性減少)、遊びの消失(loss of joint play)などの関節の機能障害(joint dysfunction)が存在すると、動作の際に痛みを感じたり、特定の部位にこわばった感じなど、身体になんらかの不調を覚えます。 モーションパルぺーション(motion palpation)は、脊椎、四肢の関節が、正常な可動範囲があるかどうかを調べる検査法で、実にいろいろな情報を我々に与えてくれます。関節の可動性の減少(fixation)あれば、これは筋によるものか関節自体の制限によるかは、動きの質がそれぞれ異なるため容易に鑑別できます。

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