正しい歩行というのは、腹筋や背筋を意識することはもちろん必要ですが、足底筋と足の指を使って歩くことが大切なポイントです。

患者さんに歩き方を練習していただくと、上手にできる人とできない人に明快に分れます。

上手に歩けない方の特徴として、足の指が自由に動かせない点が挙げられます。これは足部の器質的・機能的な問題がある場合によく見られることですが、そのような問題が存在しなくても、女性の場合は履物の影響で同様の現象が多く見られます。

このような場合、理想的な歩行とはほど遠く、ふらついたりしてバランスがとれず、なかなか上手に歩くことができません。

バランスがとりにくいのは、立脚期後半から歩行周期の最後の推進期 Propulsive Peiod)にかけて、5本の指でしっかり地面を捉え、蹴り出して前進することが困難となるからです。

親指をぐっと外へ向ける母指外転筋ひとつをとってみても、この筋肉の働きで、踏ん張って足のアーチを支持でき安定感を増すことができるのです。

自分で足の指を自由に動かせない方が多いという事実は、非常にお気の毒ともいえる、女性の足の環境を考えれば当然の現象なのかもしれません。

足の指にとっては迷惑である窮屈なストッキング、爪先の尖った靴、ヒールの高い靴などの影響により、靴の中で足の指が縮固まった状態が当たり前になっています。これらの事情を考えれば、足の指でグー・チョキ・パーができない、いくら動かそうとがんばっても指先に意識がいかず、自分の手で足の指を広げてやらないと動かないのも納得できるでしょう。

しかし、この足の指の自由な動きが、理想的な歩き方・正しい立位姿勢の際には必ず必要なのです。「足には何故五本も指がついているのか?」改めて問い直してみることも必要でしょう。

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