駄菓子屋でよく売られているスルメを食ぺていた私のアゴに、急に痛みが走ったのは高2の春のことだった。あまりの痛さに口を開けることができず、食事の際は食べ物を小さく切らなければ食べられない、あくびさえも我慢しなければならない状態になってしまった。小さい頃から、口を開けるとアゴがカクカクと音を立てることはあったが、痛みで口が開けられなくなったのは、これが初めてであった。

歯医者に行くと顎関節症と診断された。初めに訪れた歯医者では、治療が出来ないということで、大きな大学病院を紹介された。そこでは、私の歯の噛み合わせに原因があると言われ、矯正装置をつけることになった。しかし、治療を始めてから半年経っても一向に痛みは引かず、口は2センチ位しか開けることが出来なかった。そんな私を見かねた母は、怪しげなカルト宗教に私を連れて行った。それまで宗教的なものを全く信じていなかった母であったのだが、娘がアゴが痛いと言いながら食事をしなければならないのを見ていられず、ワラをもつかむような気持ちであったのだろう。2度ほどその宗教の会合みたいなものに出席したが、どうしても信じることが出来なかった私は、母に止めようと訴えた。そして初めにアゴが痛みだしてから7ヶ月後、やっと荒川先生の治療を受け始めることになったのだった。

カイロプラクティックのことは、母の友人の紹介で初めて知った。カイロプラクティックなど、あの頃の私には聞きなれない名前であり、初めは半信半疑だった。でも宗教よりはいいだろうと思い、週に一度のぺースで通い始めることになった。接骨院のように骨をポキポキ鳴らして治すのだと想像していたのだが、実際は後頭部の骨をギュウっと押しながら歪みを整えていくという感じだった。先生は治療の時に、なぜこの骨を治しているのか、骨が歪んでいるとどのような状態になるのかなど、絵や模型、写真などを使いながら説明して下さり、治療中は安心感があった。自宅で自分でもできるように、骨の押し方のコヅを教えて下さったりもした。また、アゴの治療だけでなく、骨盤の歪みや、肩こりなどの治療も並行して行って下さった。

治療を続けていくうちに、私のアゴはだんだんと痛みが無くなり、口は少しずつ、少しずつ大きく開くようになっていった。なんだか信じられない思いがした。母も本当に驚いていた。

そして治療を始めてから5ヶ月後、ホームステイで訪れたアメリカで、大きなハンバーガーをおもいっきりほおばることができた私の喜び、あの嬉しさは今でも忘れられない。(2001/01/30)


先生のコメント:ひとつの症状が完治した後、またこちらを思い出して来院して頂けるのは本当に嬉しい。(来院するご本人はそうでもないだろうが・・)今回、来院された児島さんは5年ぶりで体験談も書いて頂けました。感謝!!
  Casey MGusey(アメリカの物理学者)は、口を開けたり閉じたりする下顎の運動を物理的に解析しました。その結果、下顎運動の中心は第二頚椎歯突起にあるのが正常だと1945年発表しました。カイロプラクティックで頚椎を調整することにより、噛み合わせがスムーズになるのもこのような理由によるものです。勿論、頚椎だけで顎関節症のトラブル全てが解決する訳ではなく、頭蓋部・顔面頭蓋部へのアプローチが必要なケースもあります。加えて口腔内因子が存在する場合、実際に手を動かして治療できる歯科医への紹介が必要なこともあります。
  咬合異常の発生因子はこのようにいくつも挙げられますが、児島さんの場合は確かに口腔内因子は存在したものの、直接それが顎関節の痛みの原因ではなかったようです。頭蓋骨・顔面頭蓋の問題が、顆頭の位置の移動を招き、それにより関連する軟部組織のバランスが崩れたことによるものだと考えられます。
  日本語教師を目指して今春、台湾に留学される児島さん。頑張れ!!陰ながら応援しています。

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