THE BODY AS COSMOS 身体という宇宙。…A

からだは交響楽である。

人間が音楽を発明するきっかけとなったのは、集団労働の際の掛け声や、会話の抑揚、感情の興奮と共に発する音声、大勢の人が一度に声を発した時の老若男女の音程差など、諸説があって定説はありませんが、宗教的な心の平安と歓喜に源泉があったことは確かなようです。そして無限の音の世界を展開する交響楽。

しかし、音が音楽であるためには、リズム・旋律・和声など身体の機能バランスと同様に、ある秩序が必要であることは言うまでもありません。

無限と秩序。こうしてみると、身体という宇宙には、あなただけが奏でられるシンフォニーが流れているのかもしれません。

 

基調 The Keynote

見落とされがちなことですが、音が音として聞こえるためには、ある一定の静寂が必要です。そしてその響きが心地よかったり、躍動感を与えてくれるのも、背景に静寂という舞台があるからに他なりません。その意味において、静寂こそ音楽の基調と言えるでしょう。

では、喜怒哀楽を全身で表現する身体の基調とは?それは、人間の身体の60%を占める筋肉・骨格系にあるのです。ここでは、その基調は、どのようにできているのか、どう機能しているのかをみてみたいと思います。

人間には200個以上の骨がありますが、その中でも重要な役割を担っているのが背骨と骨盤です。背骨は24個の椎骨が仙骨という土台の上に、まるで一家の大黒柱のように立っており、これが背骨が脊椎といわれる由縁でもあります。そして仙骨を安定させるために、両側では寛骨という大きな骨が支えているのです。

この脊柱が人間の姿勢や動きを支える骨格ですが、肋骨や骨盤と協働して内臓も支えています。頭蓋骨の下には7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎と、5個の仙椎が癒合した仙骨と、4個から5個の尾骨が集中して脊柱を形成しているのです。まるで、大管弦楽団を擁しているような壮観さです。

そして、この30個以上の骨は強靭で柔軟性のある組織で連結されており、その一つが、椎間板という軟らかい組織で、1個1個の脊椎の間にあり、クッションの役目を果しています。もう一つは、靭帯というテープ状のすじが、脊椎の前後左右斜めから連結し、さらに小さい筋肉や大きい筋肉がしっかりと脊柱をガードしています。

また、背骨は1本の柱として、人間の身体を支える重要な器官ですが、同時に、筋肉の作用が働いて、細やかでダイナミックな動きを演出する運動器官でもあるのです。特に頚椎は重い頭蓋を支えながら、全方向に対応して動きます。硬い骨でできている背骨に運動性があるのは、背骨の一つ一つの椎骨の間にある、柔らかくて強靭な組織である椎間板の作用によりますが、逆に言えば背骨はゆがみやすい造りでもあるのです。まさに、椎間板は弾力性に富んだ「柔」と、重い身体を支える「強」と相反する二面性をもった組織で、音楽記号でいえば、瞬間的な強奏ののち、ただちに弱奏を要求するフォルテピアノのようなものと言えるでしょう。

カイロプラクティックでは、特にこの背骨の運動機能単位である。関節間(モーター・ユニット)に注目しています。中でも、骨のずれ、といった単なる構造的な関節障害のみならず、モーター・ユニットの機能的、あるいは動的な変調を重視しています。こうした関節間ユニットの変調は、その周辺を構成する筋肉、靭帯、循環系や神経系にも影響を及ぼすことになります。この概念は、臨床上でも重要な考え方になっており、既存医療に対するカイロプラクティックの斬新な主張でもあります。

関節間ユニットの動的な変調は、日常ごく一般的に起こり得るのです。人間にとって、椎骨の一番最初のトラブルは、出生の時であると言われています。赤ん坊は生まれる時に、首が捻じられ、鉗子で引っ張られ、大変困難な作業の中から産声を上げるわけですが、これが新生児の脊椎不整列の原因となっています。

背中を不意に押されたり、何かにつまずいてバランスを崩したり、階段から落ちた、滑って転んだ、交通事故、スポーツでのたいしたことがないと思われているケガ、悪い姿勢、重い荷物を抱えての旅行等々。何とも思わないで通り過ぎて行った、身体へのマイナスな刺激は、次第に人間の身体を歪め、関節間ユニットに動的な変調をもたらし、それに関連して神経系、循環系、運動系のトラブルをつくり出していきます。

このように、背骨は、まさに人間の身体をコントロールする支柱であり、健康の基調をなすものなのです。そしてまた、身体の諸器官をオーケストラの諸楽器とみなせば、背骨はその指揮者であるとも言えるでしょう。  

変調 Change of Conditions

音は、高さ、長さ、強さ、音色の四つの基本的な属性によって特定の音が規定されますが、その音から音楽を形成するには、一般的にリズム、旋律、和声の3要素が必要と言われます。

そして、その3要素の中でも、旋律を持たない音楽や、和声を持たない音楽はあり得ても、リズムを持たない音楽は考えられないように、リズムこそが、音楽の生命なのです。また、周期的に変動する身体の状態や現象を表す言葉として、「バイオリズム」という言葉があるように、音楽を超えた、より根源的な生命と直接かかわりを持つ力でもある。

しかし、規則正しいリズムやメロディーのみが音楽ではありません。シンコペイトされたリズムは千変万化のおもしろさを表現しますし、モーツアルトの音楽の美しさは、テーマが突然に変調するところにあると言う人がいるほどです。では、人間の身体にとって、リズムに変調をきたすということは、どんな状態を言うのでしょうか。

神経は、人間のあらゆる働きをコントロールする上で、大切な役目を担っています。例えば、人が歩く時、足は、交互に前に出て身体を前進させていますが、右足と左足が先を争って出ようとしたなら、歩くことなど、おぼつかないことになるでしょう。

この時、右足と左足がお互いに話し合って、どちらが先かを決定するわけではありません。それを決めるのは、人体の総司令部である「脳」であり、脳の決議をそれぞれの足に伝えるのが、身体にはりめぐらされた情報ネットワークとしての「神経」であります。

この神経の通信網を、微弱な電気エネルギーが身体の情報を運んで、時速400kmの超スピードで駆け巡っているのですが、もし、神経がなければ、われわれはチグハグな行動を取ってしまうことになります。この通信網がスムーズに連絡することができなくなると、情報も滞り、人間の身体は健全に機能することができなくなってしまうわけです。

これは病気やケガの場合でも同じで、もし転んですり傷ができると、その部分にばい菌という外敵が侵入しますが、その時、神経は超スピードで、脳に「膝をすりむいた」と報告します。そして身の危険を察知した脳は、負傷した膝に白血球をたくさん集め、ばい菌と戦わせるのです。もちろん、こうした指令は神経によって全身に伝えられます。こうして、身体に起こった変化は神経を介して伝達され、防衛策もまた、神経を介して指令されるわけです。

こうした神経による身体の情報網は、内臓も含めて全ての身体の活動を支配しているのですが、神経を意識的に操作することはできないため、神経は寝ている間も休みなく働き、身体の内部環境に異常がないか、いつもパトロールを怠ることができません。

カイロプラクティック的にみれば、関節とその周辺の組織に発生したカイロプラクティック・サブラクセーションが、神経系を介して全身にシグナルを送るということになります。人間の身体が有機的に結びついた存在だからこそ、身体に現われるそれぞれの症状は、身体からの警告シグナルだと言えるでしょう。

こうした、もの言わぬ身体の叫びとしての様々な症状は、神経の通信システムを通して、様々な身体の不定な愁訴として現われてくるのです。

脳から出た神経は、すぐに背骨の中に入りますが、もしも背骨にトラブルが生じると、神経のネットワークにも混乱が起こり、身体の色々な組織や各臓器に機能的な障害が起こってきます。そうなると、身体の修復作業も困難になります。こうして、身体はますます本来のリズムを崩してしまうことになります。

カイロプラクティックは、こうした神経の作用に注目しながら、身体に起こったシグナルを読み取り、身体の内部環境の調整に協力していく治療でもあります。その意味では、生命のダイナミズムとしてのリズム変化は認めるものの、大方は基調を設定する調律師といったところでしょうか。

 

旋律 The Melody of the Body

旋律=メロディーとは、色々な高さの音が連続しているものであり、ギリシャ語のメローディア(歌う)に由来しますが、もともとはメロス(歌)と詩(オード)との合成で、詩を歌うという意味であるそうです。

最古の旋律パターンは、最高音から最低音までの広い音域を上下するものと、ほとんど二つほどの音域のせまいものに大別されるようですが、ヨーロッパにおいては、それぞれの時代の音楽様式と密接に結びつき、声楽旋律と器楽旋律とに分けられます。そして、1600年以前を声楽旋律優位の時代、以降を器楽旋律優位の時代とみるようです。

さて、旋律の変遷史とは関係のない話ですが、医学においても一種の流行というものがあります。例えば、デカルトによれば、人体は一種の「自動機械」でありました。その意味で、身体は医学の対象になるが、理性を持った人間は機械としての人体とは全く別のものである。という有名な心身二元論を1637年に「方法序説」の中で発表したのです。近代科学は、このデカルト的パラダイムに支えられ発展してきたと言えるでしょう。

こうした、身体を部分に分割して、可能な限り細分化しながら、身体全体を構成するメカニズムを解明する方法論は、医学の進歩に大きく貢献しました。病気になったら、悪くなった部分を治せば解明できるという基本的な考え方が今日の医療を支えているのはそのためとも思われます。一方、「心身一如」といった東洋の生命観などは、生命の本質を総括的に捉えようとする考え方であります。この論争も、医学の源流をたどると、古代ギリシャ時代にさかのぼります。

ヒポクラテスを中心にコス派と呼ばれた人々は、病気を持った病人を診ました。これに対立したのがクニドス派の人々です。彼らは病気や症状を病型分類し、患っている細分化された部分を治療していました。

部分にとらわれると全体が見えなくなる、全体をとらえると部分を見失う。両者の欠点を補完する立場で、今日のカイロプラクティックは、コス・クニドス両派の影響を受けているものの、その理論的源流はコス派の全体論(ホリズム)が根底にあると言えましょう。

そもそも生命は、全体として常に最適な恒常性を維持しようと働いており、D・D・パーマーは、ヒポクラテスの考えを踏襲して、こう推論しています。「人体はそれだけで完全な生物体であり、その置かれた環境の中で、それ自身の中に人体を生理学的平衡状態(恒常性)に保つためにあらゆる必要条件を生まれながらにして持っている。そうした状態に保たれている時には、本来あるべき姿として健康は維持されている」と。

この概念は近代に入って一層発展していきました。つまり、人間を取り巻く外部環境は常に変化していますが、その内部環境は常に一定に保ち、調和されるように動くとする、アメリカの生理学者W・B・キャノンが説いた「ホメオスタシス」理論であります。このホメオスタシスが正常に維持されていることによって、臓器や各組識が一つの自律的な統一性を持って機能を全うすることができるという主張です。

例えば、旋律からリズムを取り去ってしまうと、無味乾燥な音のかたまりにしかすぎないのですが、何の変哲もない分散和音にリズムを与えると、とたんに生き生きとしたメロディーになるように、音楽もやはり一つの自律的な統一性によって成立しているのです。

こうした「生体の自律性」と言うべき特徴を、小宇宙としての身体は持っています。その意味でも、人間の身体は、色々な器官や組織という部分が集積されてできていますが、それらは決して部分として独立した存在ではなく、相互に密接に関連した有機体としての存在なのです。部分はそれ自体、独立した部分でありながらも、相互の関連性を持った統一体としての全体なのです。この複雑な関連性と調和のリズムを一定に保つのが神経系であり、カイロプラクティックの学技は今後もその究明に貢献していくことでしょう。

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